原作とは違うオリジナルの魅力あふれる映画『ドライブ・マイ・カー』

今話題の映画、濱口竜介監督作×西島秀俊主演の『ドライブ・マイ・カー』を観に行ってきました。

本作は、昨年のカンヌ国際映画際で日本映画初となる脚本賞のほか全4冠を受賞。その後も海外の賞レースを総ナメにし、いよいよ明日、2月8日に発表されるアカデミー賞のノミネートも視野に入り日本映画史上初の快挙への期待も高まっています。

原作は村上春樹氏の短編小説集“女のいない男たち”(2014年文藝春秋刊)に収録されている「ドライブ・マイ・カー」。上映時間は179分と長いのですが、静かに、そして淡々と展開していくストーリー、映像のリアルさや美しさ、効果的な音楽(時に無音!)にいつしか引き込まれ、気づけばあっという間に終わっていました。なんといっても素晴らしかったのは、濱口監督自らがオファーしたという喪失感に生きる主人公の家福を演じる西島秀俊さん。そして妻の浮気相手・高槻役の岡田将生さんの胸に迫る演技です。恥ずかしながら村上文学への理解度が低い私には理解できなかった部分もあり、原作を読んでみることにしました。

※以下ネタバレ含
なんと映画化に際して、「ドライブ・マイ・カー」だけでなく、同小説集に収録されている「シェエラザード」「木野」──この2つの短編の要素も加えて独自に築き上げられた世界観だったことにビックリ!

小説ではたった1行だけ登場し、劇中劇としては重要な役割を果たすロシアの文豪・チェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」。日本語、英語、中国語、韓国語など9つの異なる言語を使用する言語演劇で、さらに韓国手話まで取り入れてひとつの物語をつくるという斬新な手法に、ダイバーシティ・インクルージョンを感じました。映画を見るまでは「外国でもこれだけ評判なのは、きっと海外で最も有名な日本人作家・村上春樹の小説が原作だからでしょ?」などと思っていましたが、濱口監督オリジナルのこうした巧みな演出も海外で高く評価されているのだと思います。

アカデミーでは多様性を重視する社会の実現に向け、2024年から作品賞のノミネートで多様性に配慮する新基準を設けるとのこと。海外に比べてまだまだ旧態依然とした価値基準が残る日本社会に於いて、多様性をいち早く取り入れた映画ドライブ・マイ・カー。この映画が、人々の意識を変えていくきっかけとなるかもしれません。

小説とはまた違う展開で、ただのロードムービーではないというタイトルの意味が最後にわかり、少しポジティブな気分にさせてくれました。人により捉え方や評価が分かれるところですが、皆さまはどんな感情を抱かれるでしょうか。
(写真と文 H・M)

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