コロナ禍4年目となる2023年。
今井講師による人気講座もこの間休講を余儀なくされたり、1回で行っていた講座を2回に分けたりした時期もありました。しかし昨年7月には無事100回目を迎え、今期もキャンセル待ちが出るほどたくさんのお申込みをいただいて、1月11日よりスタートしました。
ポストコロナ時代──寒い時季ですが、非常扉を開けるなどして換気を行っておりますので、引き続きご協力をお願いいたします。
“壽 初春大歌舞伎”は歌舞伎座新開場十周年を迎える令和五年の幕開けに相応しく、華やかで多彩な演目が勢揃い。
いつものように第一部~第三部、それぞれの演目についての今井先生ならではの解説があり、軽妙なトークに時折笑い声も。終始和やかな雰囲気で講座が進みます。
今井先生は、第二部「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」の演出をご担当しています。人間万事金世中は、イギリスの小説家・リットンの戯曲『マネー』(原題The Money)を歌舞伎狂言の名作者・河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)が明治時代に翻案した作品。Moneyのタイトルを『人間万事金世中』とした黙阿弥のネーミングセンスが光ります。この他、第一部「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」、第三部「十六夜清心(いざよいせいしん)」も同じく河竹黙阿弥によるもの。
今年没後130年を迎えるということもあってか、初春大歌舞伎は黙阿弥祭りです(笑)。
第二部のもうひとつは「壽恵方曽我(ことぶきえほうそが)」です。こちらは日本三大仇討ちのひとつで、いわゆる“曽我もの”。歌舞伎のお正月ではおなじみの作品ですが今回は新作に近いものだそう。
歌舞伎座はコロナになって3部制になり、上演時間などの制約があるため長い演目は短くしなくてはなりません。カットするとすっきりしてストーリーとしては分かりやすくなるけれど、お芝居としては味わいが薄くなってしまう、というのが悩ましいところ。今井先生は先人が書かれたものに手を入れるときは、できるだけ元の作品の風情がなくならないよう必ず原作を読むようにしているのだとか。黙阿弥作品に限らず「原作があって特に上演頻度が高いものは、機会があれば原作をお読みになるといいかもしれません」とおすすめしていました。
まだご覧になっていない方にとっては観劇ポイントや見どころがたくさん聞け、すでに観劇された方にとっても、振り返りができる有意義な時間となったようです。
(写真と文 H・M)