作者と劇評家のコトバで読み解く「歌舞伎のセカイ」。記念すべき第10回は松竹で脚本・演出を手掛ける今井豊茂さんがスペシャルゲスト

Ginza楽学倶楽部の人気講座「歌舞伎のセカイ」第10回は、木ノ下歌舞伎主宰の木ノ下裕一さんと演劇評論家の田中綾乃さんに加え、今井豊茂さんを迎えて去る6月23日、神楽坂の赤城神社(参集殿)で開催されました。

人気企画も節目の第10回。今回は今井豊成さんをスペシャルゲストに迎え、鼎談の形で進行しました。お題は『三人吉三郭初買』。木ノ下さん主宰の「木ノ下歌舞伎」では、今年9月に同演目の再演を控えています。

『三人吉三郭初買』は河竹黙阿弥が書き、1860(安政7)年に初演された作品。日頃、古典作品の補綴でご苦労されているであろう今井さんが冒頭、「過去の巨匠の作品を短縮するのは難しくありませんか?」と、木ノ下さんに水を向けました。

「私はいつも、脳内で大御所に現代東京へお越しいただいています。街へ出掛け、ニュースを見、今なら都知事選も見ていただいたりして。そうして、現代の東京を熟知した黙阿弥ならどう書くだろうと、いわば自分に憑依していただいて書くわけです」。なるほど、木ノ下歌舞伎のヒミツが一つ垣間見えたような気がしますね。

今回は、同じ場面を演じた古典歌舞伎、木ノ下歌舞伎、その他の劇団の動画を見比べる時間も多く設けられ、演出の違いがよくわかりました。木ノ下歌舞伎で復活したシーンや台詞について、木ノ下さんからはその理由が熱く語られていましたよ。

日頃、古典歌舞伎を手掛ける今井さんからは「歌舞伎も原作のまま頑なに守られてきたのではなく、時代時代の風物を取り入れて変わってきたし、そうあるべき」とのお話が。古典歌舞伎の役者さんたちも木ノ下歌舞伎を観てインスピレーションを得ているのだとか。今井さんは、以前から木ノ下さんにラブコールを送っていらしたそうです。夢のコラボ作品が観られるかもしれない。そんな妄想も膨らんでしまいますね。

今井さんからは、「これ、言っちゃっていいのかなぁ」と逡巡されながらの“歌舞伎界ナイショ話”も数多く、一堂、お得感も満喫。その都度、田中さんが「皆さん、オフレコでね。SNSには載せないでくださいね」とフォローされ、講師陣のチームワークも抜群でした。

こうなると「次回は?」と期待が高まりますね。どうやら噂では12月に第11回が予定されているとか、いないとか。案内が待ち遠しい!

(文 AM)

今回、資料を入れて参加者に配られたオリジナルのクリアファイル。涼やかなグリーンが好評でした

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